第38話
「皆さん、正午になりました。
今日も、お昼の放送を始めます。
本日も…うーん、本日からは私『萩岡 緋音』がお送りします。
質問・要望等は、いつも通りメッセージをお願いね」
緋音は、社長室に戻ってくると席について朝礼同様に会議を始めた。
彼女によると、朝礼と終業時には毎日会議を行っていてこれは必ず出席するように全社員にいってあるそうだ。
で、現在はお昼の放送。
これは、任意出席だそうだ。
基本的には、給食が支給されているらしく8割出席しているようだ。
俺達の前にも、その給食は用意されている。
毎日献立は違っていて、専属の栄養士数名が考えているらしい。
ちなみに、俺達は社長室だがほかの社員は一階の社員食堂で摂っているらしく、会議室は俺と緋音だけだ。
これは、ただの配信なのではと思ってしまった。
「えっと、今日のA定食は…あ、慎くんにも説明をしないとね。
A定食は、魚主菜でご飯。
B定食は、お肉主菜でご飯。
C定食は、天ぷらとそば。
D定食は、天ぷらとうどん。
E定食は、ラーメン。
F定食が、カレーだよ」
俺の方を見ながら、緋音がそう言った。
あー、モニターに視線を向けずにこっちに行ってるよ。
俺達の前には、多分いい所取りをしたと思われる料理が配膳されている。
「さて、A定食は…あ、手元カメラ手元カメラ…あ、慎くんよろしく」
俺は、急にカメラを手渡される。
そのカメラを手に取り、配膳された料理を映す。
「A定食は…ムニエル。
うん、それそれ。
えっと、栄養士の詩音さんから『ノンフライ』ですとメモ書きがされてます」
「え?ムニエルのノンフライ!
ムニエルって揚げる物だから、ムニエル風なんだね」
「え、やっとまともな献立説明がって酷くない?」
緋音は、メッセージに文句を言っている。
すっかり、素が出ているのだが大丈夫なのだろうか。
「あれ?詩音さんからもメッセージ。
そのタルタルソース。絹ごし豆腐だって、慎くん」
「え、マヨネーズ使ってないんだ。
あ、じゃあこっちの唐揚げについてるタルタルソースも。
確かに、それならかなりヘルシーだね」
タルタルソースは、基本的にはゆで卵、玉ねぎ、ピクルス、マヨネーズを混ぜ合わせた物だ。
これは、そのゆで卵とマヨネーズを取り除いた玉ねぎ、ピクルスに木綿豆腐を混ぜ合わせた物なのだろう。
「おからパウダーやヨーグルトを使ったタルタルソースは知ってたけど豆腐は知らなかったよ。
今度、家でも作ってみようかな」
「ホント、楽しみ」
緋音は、嬉しそうに呟いた。
昼食をこんな楽しく過ごすなんていつぶりだろうか。
前は、コンビニで買ったおにぎりや菓子パンばっかだったからなぁ。
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