第27話
夕食後。
俺達は、背中合わせで湯船に浸かっていた。
なぜ、俺達がこんなことになっているかと言うと少しだけ時間を遡る。
「はぁ、ご馳走様。美味しかった」
「あはは、良かったよ…それにしてもいっぱい食べたね」
俺は、結局料理を残すことなく全て食べ切っていた。
残すのはもったいないという気持ちと美味しすぎてついつい…後悔はない。
ちょっと苦しいだけ。
少し落ち着けば大丈夫だろう。
それにしても、ここ最近ではかなり久し振りに大食いをした気がする。
「じゃあ、あとはお風呂入って寝るだけだね」
「そうだね、俺は緋音の後でいいよ」
「そう…」
緋音は、浴室に向かおうと立ち上がったが少し考え込んだ。
そして、不敵な笑みを浮かべる。
「時間ももったいないし、一緒に入る?」
「はぁ?」
俺は、突拍子もない事を言われて素っ頓狂な声を漏らす。
ははん、俺が怖気づいたりするのを見て楽しもうって腹だな。
よし、ここは乗っかってしまおう。
「そうだな、そうしようか」
「え?」
緋音の顔がみるみる真っ赤になっていく。
そうして、俺達は背中合わせで湯船に浸かるのだった。
恥ずかしい。
素肌を合わせて、更に裸で触れ合うのは流石に緊張する。
それが、昔からの知り合いでも。
20年も会わずにいると変わったところも多くて…。
女性らしくなりすぎだって。
あー、駄目だ。
意識すればするほど、機関棒が言う事を聞かなくなる。
浴室の壁を眺め、頭の中で念仏を唱えながらいると俺の背中に先程まで感じていた感触ではない物が触れた。
多分、小さいから手かな。
なんとなく、爪が当たって言うような気がする。
「肩幅広くなったね」
「ああ、なんだかんだで肉体労働もさせられていたからな。
流石に、2年の入院生活で筋肉はだいぶ落ちちまったがな」
リハビリ期間を経たことで、細マッチョみたいな感じになっている。
「でも、見た目は昔の慎くんと同じ感じに見えるから東京では結構太ってた?」
「ああ、結構食べてた…ストレスでね。多分、20キロくらい違うかも。
高校時代と同じくらいの体重に戻ってるから緋音には見慣れた体形なのかもな」
そう、だから俺の着替えは少ない。
スーツですらサイズが合っていない。
今日来ていたのは、帰るのに合わせて購入したものだ。
過労で倒れ、駅の階段…上部から転げ落ち全身複雑骨折。
入院して検査をしたら胃潰瘍にもなっていたらしく、長期入院となった。
そこまで行くと食生活も見直され、体形も一気に変わることになった。
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