17 婚約期間一週間、ついに婚姻の儀です

「ついにこの日が来たわね。緊張はしないけど疲れそう」

「ですがお身内だけでしょう?旦那様のご親族は来られませんし、リーシャ様だってご家族は呼ばないとおっしゃられていましたよね」

「そうね。参列するのは旦那様の腹心の方とリジー、皇族の皆様。それから……お姉様も」


 旦那様のご両親には参列しなくて良いと言ったらしい。わたしは家族なんて呼ぶわけないし、必然的にこのメンバーになるわけですよ。さすがに参列者ゼロは無理だからお互いの腹心と、ロードだから皇族の皆様も。表向きは公爵家だからって理由らしいけどね。お姉様は一応招待したけどたぶん来ないね。お姉様の意思はともかく、お継母様が許さないでしょう。お父様はどうでも良いと思っていそうだけどね。


「……ソフィアお嬢様ならこっそり来られそうですけどね」

「ん?なにか言った?」

「いえ」


 でも人生に普通は一度の婚姻の儀だし、どうせならちゃんとした姿でしたいなって思っていた。だからこの一週間で完全回復したのはすごく嬉しいね。髪や肌の艶は戻ったし、体つきだって痩せすぎず太るでもなくちょうどいい感じになったと思う。


 すごく綺麗だったお母様ほどではないけど、人に見せられる容姿にはなったでしょう。見苦しくはなくなった…はず!


 でも公爵様はわたしが健康的になったことを知らない。さすがに少しは気付いてほしいけどどうかな、あの公爵様だし気付いても何も言わなそう。


「───……誰か来る。わたしが知らない人」

「旦那様の腹心の方では?」

「違う。その方の気配は公爵様が屋敷を離れる前に覚えたから」

「まさか、あの一瞬で…?毎度思いますがすごすぎます」


 この屋敷にいる人なら気配を覚えている。しかも不自然に気配を消しているから不快。だれ?まさかとは思うけど暗殺者?わたしの敵?


 いくら何でも婚姻の儀に殺傷沙汰を起こしたくないのですけど。公爵様、このお屋敷の主ならもっとセキュリティ面に気を使ってくれません?屋敷を血で汚しても知りませんよ?文句は受け付けないですからね!


 そんなことを考えている間にも気配は近づいてきている。間違いなくリーシャの部屋をめがけて歩いてきている。そしてリーシャの部屋の前で立ち止まり───コンコン、と二回ノックされた。次いで聞こえてきた声は……


「リーシャ、入るぞ」

「……んん?」


 リーシャもリジーも二人そろって警戒を解き、何とも言えない顔になる。その声は、まさにこれからリーシャの夫となるアルヴィンのものだった。

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