5 それを証明するのは
目の前に座る公爵の両目に一筋の金色の光が走った。次の瞬間には黒髪黒眼の美貌の公爵は黒髪に右目が金、左目が赤のオッドアイへと変化していた。それは、その人がロードであることを指し示す。
・ロードの爵位は建前上のものであって特に意味はなく、どの家も平等な権力を持つ。
・その家の直系と皇族、他の家のロードは当主にしかロードだということは分からず、普段は建前の爵位を使用(知っている者は他にもいるが、決して他言してはいけない)。
・ロードは直系のみオッドアイを持つが普段は色を変えている(ロードしか瞳の色を変えることはできないので偽りは不可能)。
・ロード同士で敵対することは王命により禁じられているが、そもそも当人たちは皇家の忠臣なだけあって敵対することに興味はない。
・ロードは各家で違うが、それぞれの役割に合わせて初代皇帝が作った特殊な能力を使うことができる。
・ロードの家系でも、直系ではない限りそれはロードとは言われない。
・皇族にとって、ロードは身内のようなもの。
これが世間が知るロードだ。そしてこれはすべて真実。
余計なことを知ってしまったわ…知りたくなかった事実だよね!
「どうだ?」
「ええ、綺麗なオッドアイですね。まさか公爵様がロードだとは思いませんでした」
君も見せろと視線で促されたので同じく本来の瞳の色を晒す。普段は銀髪に紫の瞳だけど、本来の色は銀髪に右が紫で左が金のオッドアイ。
いつもは色を変えているからなんだか落ち着かないんだけど…それにしてもこの方の赤い方の瞳、すごく綺麗だわ。やっぱりなんか癪に障る人ですねあなた!
右の金はわたしと同じ色だけど赤はわたしにはない色。黒髪に赤い瞳というのは鋭さも感じられてとても美しいと思う。美しいとは思うけど、やっぱり性格最悪だし瞳の色以外好みじゃない。
「……」
「どうかしましたか?」
「いや、なんでもない。それより婚姻の儀は一週間後になる。明日には屋敷に来てもらう。迎えに来るから準備しておいてほしい」
「明日!?」
いくらなんでも早すぎない?準備しておいてほしい、ではないんだけど。しかも式が一週間後って…ロードの式には陛下たちも来られるはずなのにその辺の配慮はいらないの?皆様よろこんで予定を合わせてくださりそうだけど!
「なにか問題でもあるか?」
心底不思議という顔をしているが目は笑っている。確信犯だ。公爵は普通に笑えないのか何なのか知らないけど、その意地の悪い笑みはやめた方が良いと思うのです。いくら顔が良くても一度は引かれますよ。ひとつ私からの助言です。助言と言いながら声に出してないですけどね。
「問題と言いますか、準備が良すぎませんか?」
「別に早くから準備していたわけではないぞ。ただ権力にものを言わせただけのことだ」
「そうですか。では明日までに荷物をまとめておけばよろしいのですね?」
「そうだ」
建前のものとはいえ公爵だ。そういうことも可能だろう。ロードの家系の爵位は建前だが、それでも領地を守る義務はあるのでその領地が管理できなくなればそれなりの罰が待っているのだと思う。わたしがこんな好きになれなさそうな人と結婚してまで領地を守ろうとしているのは領主一族だからであり、ある人を安心させたいからでもある。あるいは解放してあげたいともいえるだろう。
不器用ながらも影からわたしを守り続けてくれていた人を。まあ好きになれなさそうな人って言っても、顔は良いから(わたしは好きじゃないけど!)生理的な嫌悪感はないだけマシなのかな?
「分かりました。あ、それと前公爵様と公爵夫人はどちらに?嫁姑問題は遠慮願いたいですよ」
「領地の屋敷にいる。私たちが暮らすのは王都にある屋敷だからそこは気にしなくていい。婚姻の儀には急だから来ないはずだ。いずれ顔を合わせる時が来ると思うがその時はその時だと思ってくれ」
「嫁姑問題は?」
肝心のそこは何も聞いていないのですが?ちょっとそこ!目を逸らさないでくださいよ!まさか…本当にそういう系のお母様だったりしないよね!?もうやだな、この人。良い関係を築けるのか今からすっごく不安なんですけど。
「冗談だ。大丈夫なはず…たぶんな?」
「断言してくださいよそこは!」
「遠慮がなくなったな。早くないか?」
誰のせいですか誰の!あなたですよね!?社交界であなたの噂を広めましょうか?もちろん悪い方の。……そんなことしたら噂になるのはわたしの方だと思うけどね!
「それはさておき。実害はないと思う。さすがに実害があるようなら何とかするが嫌味くらいなら自分で何とかしろ。ロードならそういうのはお得意だろう?」
「どうでしょうね」
ロードならって、わたしの役割知らないですよね?それを言うなら貴族なら、だと思うんだけどな。まあ良いけど。
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