第65話

本当に大丈夫だって言っているのに、スプレの表情は相変わらず暗い。




あなたとミルがいたから私はようやく、ビターの呪縛から逃れられそうなのに。恩人がしていい表情じゃないよね。




「兄上も兄上だ。小町を放っておくなんて。」




スプレの悪態は、聞き流すことにした。



ビターの生活ぶりはある程度ミルから聞くことができた。



それは私が巻き込んだ以上、シュガー以外の候補者たちを守るべきだと思ったから。



だって元々私以外の候補者たちが次々と不幸に教われたのは、偶然でも私がやったのでもなく、他の第三者が彼女たちに悪意を持って傷つけたから。




それを誰がやったのかは知らないけれど、新しく″補充″された彼女たちをその何者かが害そうとすることは十分にありうる。




私はミルに、彼女たちを救ってくれるようにお願いした。



遠く離れた場所にいる私には、彼女たちを守るなんて到底できない。というよりその場にいたとしても守りきれるかは分からない。



それなら、全知全能の神のチートとやらをここで使わない手はないでしょ?




「陛下は、もうお心を決めているのだと思うわ。」



「っっ。小町はそれでいいのか!」




突然机を叩いたスプレに目を見開いた。



「……ごめん。」


「ううん。大丈夫だから。」



そんなに、私とビターを。

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