第39話

前々世でも、前世でも、私はどこかでずっとビターを愛していた。



実際彼に直接愛をささやいたし、あの腕に抱かれるのを毎日夢見ていた。




だけど現実は、彼も私に心惹かれはしても信頼という言葉とはほど遠かった。



「彼は一国の王としては完璧だと思う。だけど私はそれに一人の男性を求めた。それを彼は拒否した。それだけのことよ。」




ミルを前にしても、彼の話をしただけで目の前で激しく燃える炎が見える。




頭痛がする。吐き気すら覚える。自分の体が燃えていく痛み、匂い、彼らに対する憎悪、恥ずかしさ。すべては鮮明に私の中に刻まれていた。




「愛していないとかじゃなく、私は彼をもう愛せない。それなら彼を愛していて、彼を支えられる相手と結婚すれば、すべては丸く収まると思うんだよね。」



「しかし。」




なにかを言おうとしてミルは口をつぐんだ。妙な所で気を使う神様よね。私への配慮なんてもう要らないのに。




私はもう、彼を愛したくはない。もう愛なんて言葉も浮かばないほど、憎んでしまったんだから。




だけど、彼を二度も支えた身として、彼の信念や想いは分かっているから。




「それに、ビターとシュガー、お似合いじゃない。クソ野郎同士。」



「お前、言葉使いが。はぁ。」




頭を抱えるミルにニッコリと笑ってみてやった。私はなにも傷ついてない。そう思わせたくて。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る