第46話

「さっきから、機嫌が悪いんですね。」




火炉の頬を撫でると、私の手に火炉が頬を摺り寄せる。ああ、なんて可愛い人。




「あいつの存在が気に食わぬ。」




火炉の言い方は、なんだか仲のいい兄妹に対しての嫉妬じゃない、ような?


私が周防を愛するわけはないのに、変な心配をしている気がする。


鬼は、血の繋がりなんて気にしないのかな?







「そんなことを言っても、私だって周防のことは知りませんし。」



「いや、あいつは嫌な感じがする。」



ここまでくるとほぼいちゃもんに近い。本当に、なんてことを心配しているのか。



だけど、私が周防を愛さないなんて口で言ってもなんの証明にもならないから。




「火炉がどう言おうと私は、あなたの傍にいるだけですから。」



私は、行動で証明するまで。



本当か?その目が語っている。ふふ、なんだか、嬉しくて、楽しい。




「どうすれば信じてくれますか?」



「信じるとかいう話じゃないんだ。」




そう言って私に口づけをした火炉は、まだまだ不機嫌そうに額にも口づけた。





「ふむ。」



押し黙った火炉。どこか一点を睨みつけ、その手は私を放さまいと強く抱きしめている。




「火炉、愛しています。」



「……知っている。」




どうかこの鬼に生まれたばかりの感情が、純粋なまま育っていきますように。

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