第44話
私の場合、誰と比べられようが大体劣ってるからそこは別にいい。だけど翼の場合、それを分かっていて私といた。
そしてそれを、悪いとも思わないような、そんな子だったんだ。
人を悪く言うと、自分の中の何かが減っていくような感覚に陥る。やっぱりどこかで罪悪感みたいなものを感じるからだろうか。偽善といえばそうなのかもしれないんだけど、私は、なるべく人を悪くは言わないようにしていた。
それでも、翼の存在は私の中の嫌な部分を平気で晒してしまうし、自分がこんなにも嫌な人間だったんだって自覚させてくれる。
はっきり言えば、私は翼が嫌い。
だけどそれを、面と向かって言う勇気もなければ、言ったところで私たちの関係はあまり変わらないんだと思う。
「はぁ。」
食材を早く冷蔵庫にしまいたいと思うのに、身体が言うことを聞いてくれそうにない。また一つ、ため息を吐いてベッドに寝転んだ。
途端に香るのは、柔軟剤の香りと春さんの香水の香り。森林に囲まれた小さな家のベッドで、ウッド系の香りのするベッドに寝転ぶ。
まさにマイナスイオン全開でストレスフリーな環境なはずなのに、私の頭は嫌な事ばかりを思い浮かべている。
春さんがやっといつもの春さんになって落ち着いたと思っていたのに、最悪な気分だ。
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