第36話

---日常が戻ってきていた。




「お疲れ様ですー。」




相変わらず返事もしない警備員さんに挨拶をして、従業員出入り口を出る。春さんのいない駐車場に少し寂しさを感じて、最寄り駅に歩いていく。




電車で、3駅。私と春さんの住んでいる家の最寄り駅は、比較的大きい。そして高級住宅街があるせいか、降りる人もとても多かった。だからか、駅前にはスーパーや色々なショップが立ち並んでにぎわっている。



だけど、難点が一つ。




この駅の周りは、高級住宅街。そう、高級。




だから、もちろん住んでいる人たちもお金持ちなわけで、自然と駅前に売っているものも高級志向のものばかりなのだ。




……庶民な私には目を見張るものがある。牛肉300グラムしか入ってないのに5600円ってなに?しかもすごく似合わないお買い得シールが貼ってあるんですけど。




どこが、お買い得なんですか?うん?




とにかく、トマト缶1つでも定価以上で売っているんじゃないかと思うほどの駅前スーパーに、私が買えるものなんてあるはずもなく、1度だけ入った時はどうやって出ようか迷ったほどだ。




だって、スーパーに入っておいて何も買わずに帰るなんて、なんか、悪いし。




その時は結局、1缶450円もしたコーンポタージュスープの素を買って帰ったんだ。



美味しかったよ?うん。

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