第34話
「だめですよ!秘書というのは仕事のお世話をしてくれる人なんですから。それに時間外で煩わせるのは、悪いじゃないですか。みなさん家庭があるんですから。」
「一人はモテない独身、一人は人間恐怖症のなかなか寂しい奴らなんだけど。」
「っっ。だからってそれは理由にはなりませんよ!モテなくても人間恐怖症でもプライベートは存在します!」
「ふふ、華は優しいねぇ。嫉妬しちゃうな。」
一瞬だけ、春さんの目の奥が光った気がした。これ以上彼らをかばうといちゃもんクラスの難癖をつけられて困らせそうだ。それだけは回避してあげたい。
私のことになると春さんの子供っぽさは格段に増す。あまり踏み込まないこと、それが得策だ。
「はぁ。疲れました。」
「……うん。俺も。」
病室のドアを見つめる私と、私を抱きしめる春さん。2人同時にため息を吐いたら、なんだか久しぶりに息がつけた気がした。
こんな穏やかな時間、久しぶりかもしれない。
「春さん、ほんとにもう、大丈夫ですか?」
「ん。」
「そうですか。」
完璧とか、完璧じゃないとか、さっきは言ったけど、私は春さんが私を見ていてくれるならそれで、満足だった。
「……どこ触ってるんですか。」
「ん?お尻。」
「今度は手を握りつぶしますよ?」
「こわっ。」
これこそ、春さん。私の大好きな人です。
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