第6話 SWTO

 

「ん?ここは!」

「や、やった!やっと帰ってこれたんだな!」

「あはは!本当だ!ここ教室だね!」

「北王子達がやったのか!」

「あ、ありがとう!」

 北王子達も嬉しそうに近くのみんなに感謝されている。

 俺たちは元いた教室に戻って来ていた。

 だが、やはり北村先生はいないようだな。

 俺は後ろからその光景を見ていたが俺に気付いたのは横にいた愛内だった。

「生きてた?」

「あぁ、なんとかな」

「ハハッ、良かった」


 すると前の方で、

「あれ、でも私スキルが」

「俺もだ…スキルが使える」

 少しだけ大人びた生徒達、

「歳も変わってなく無い?」

「ステータス!あ、マジだ!」

「えっ!てことは中卒になるの?ヤバくない?」

「俺の進学が…」

 と慌てる生徒達、帰ってこれたことを心から嬉しく思ってはいるが、この先のことを考えれば出来れば時間は戻っていて欲しかったな。


“ガラッ”


 前後の扉が開き、

「はい、大人しく座ってもらえるかな?」

 と女の人が教壇の前に立って言う。

「だ、誰だよ?」

「なに?この人達?」

 数名の大人が囲むように入ってくる。


「先ずは話がしたい!だから座ってくれるか?」

 と言われて、とりあえず座ることにする。


「ありがとう、私の名は鈴音花梨スズネカリン。私達はSWTOSpecial World Traveler Organization、まぁ、異世界に行った人間で作られた組織だ。日本語に訳すと『特殊異世界渡航者機関』ってとこかな?」

 と教壇に立つ茶髪ボブで大人の綺麗な女性が喋る。


「君達の今後を左右するのでしっかりと聞いてほしい。まず一つ目!君達が帰って来たことは公表される。まぁ、すぐに忘れられるけどね」

 公表はされるがすぐに忘れる?

 こんなに大きな拉致事件なのに?

「いやいや、忘れられるって大事件だろ?そんなすぐには」

「『スキル』!の存在はわかるね?」

「…マジか」

 そうか、スキルね。都合の良いことで。


「二つ目!これから特別校に入ってもらう。そこは異世界に行ったことのある人間しか入れない学校だ」

「また学校に通うのか?」

「でも学校なら少し嬉しいかも!」

 何の学校かにもよるな。


「そう、そこに2年間通ってもらい、そこから『SWTO』に入ってもらう事になる者もいるだろう」

「え?進路は決まってるの?」

「基本は自由だが一部制限があるのは覚えておいてくれ。だが、希望があればスキルと異世界の記憶を無くして普通に高校生からやってもらう」

「げっ、それはちょっとな」

「記憶なくなっても18よ?、2歳も遅れて入ることになるわ」

 とざわつくが。


「いいかー!そして三つ目、異世界で人を殺した者はいるか?」

「…?」

「なにか重要なの?」

「人を殺した者は否応なく記憶、スキル消去の後、普通に高校生に戻って貰う」


「じゃあ、いないようなので…」

「はい、魔王を殺しました」

 北王子が立ち上がると勇者組が一緒に立ち上がる。

「じゃあ君がここでの勇者だね?」

「はい、あと北村先生と五美涼イツミスズが亡くなってます」


「勝手に殺すなよ?」


「「「「えっ!?」」」」


 みんなが俺の方を見る。


「い、五美!無事だったんだな!」

「良かった!心配したのよ!」

「お前、生きてんなら連絡くらいしろよ!」

 とみんなが言ってるが、

「置き去りにされたんだ、出ていけないだろ?」

 と肘をついて中村の方を見る。


「そうだ!中村ぁ!お前やっぱり!」

「ちげぇって!ご、い、五美もなんとか言えよ!」

 中村は焦って俺に何か言ってるが、

「は?俺は『置き去り』にされたが、他になんと言えと?」

 中村は俺を激しく睨むが、そんなことはどうでもいい。

「分かった!では、五美君?どうやって置き去りにされたんだい?」


「別に、先に進みすぎてオーガに勝てなかったから中村達が逃げただけだが?」

「ふむ…それでは、中村君は?」

「同じだ、俺らじゃ勝てなかったから俺たちは…逃げた」

 中村は口籠るが逃げた事は認めたようだな。


「ならば、しょうがないとしよう。それから北村先生はどうやって死んだのだ?」

 俺のことは終わりで北村先生の事になった。


「最初に北村先生があちらの姫に抗議したところ首を切られ亡くなりました」

「ふぅ、そうか。その国はもう終わりのようだな」

「??」

 北村先生が殺されたのは最初の方だが、どう言う事だ?

「勇者は知ってると思うが『審判の天秤』は召喚の事象を審判し、召喚された者の善悪関係なくその行為の代償を裁く。北村先生を殺した姫とやらはその代償を償ったはずだ」

 そんな物があったのか、俺は俺の意思でやったから腕は元に戻らない。

 そうか、ならばあの姫は終わったのだな。

「なら召喚した国は?」

「滅びる」

「…」

 まぁ、仲良くなった者もいるだろうし、あの王国が滅びたなんて聞いたら…まぁ、いい気分はしないかな。


「そう暗くなるな!滅びると言ってもそう簡単に国が“ポンッ”と無くなるわけじゃないからな?」

「なんだ、良かった」

 誰かがつぶやく。


 みんなホッとして口が軽くなり喋り出す。


「では!ラストにこれだけは言わせてくれ。帰ってきてありがとう!おかえり!」


「う…グスッ」

 誰かの啜り泣く声が聞こえ、それは他の生徒の涙を誘う。


「よし!それでは解散しよう!みんな家に帰るといい!親御さん達が待っているはずだ」


 よし!これで家に帰れるんだな。

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