#00 真っ白な部屋

第16話





見渡すもの全てが真っ白な部屋だった。


床や壁さえも真っ白で、光を反射して目が眩みそうだ。



あたしは裸足だったから、先にお風呂場を借りて足の汚れを落としたのだけど、その時やっと足の裏が傷だらけだった事に気付いた。


「痛くねぇのかよ」


跪いてあたしの足を洗う男は嘲笑う。皮がほぼ破れて、血だらけなのだから、普通はそう思うだろう。


「痛くない」


あたしがそれだけを言うと、我慢していると思ったのか、どう思ったのかは分からないけれど、男は何も言わずにシャワーのコックを下げて、タオルで丁寧に拭ってくれる。


男はその場で簡単に手当をすると急に抱き抱えようとしたのでそれはやめてくれと頼んだ。



「ほら、こっち来い」



促されたリビングは広々としていた。白いソファーに座ったそいつはあたしを雑に呼ぶので、黙って目の前に移動して床に正座した。



「そこじゃねぇよ」


「…え?」


「隣だ隣」


「…?隣…」



小さくオウム返しをして隣に正座する。


そのソファーはあたしの体重を受け止めゆっくりと沈むものだから、ほんの少しだけ感動に似たものを覚える。



「左目は見えてんのか?」


「…何とか」


「腕と、あと脚もやられてんだろ。見せろ」



命令口調に素直に従い、足を伸ばした。


大きな掌はあたしの足先さえも片手で簡単に包み込む。



「……痛い?」


「全然」


「……そうか」



深くは聞かずに傷口の手当てを終わらせると、そいつは徐に立ち上がった。


知らない場所に一人きりになり、ソファーから下りて部屋の隅に腰を落とした。

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