第265話

奏は鉄と護衛を1人連れ、足早に大学内を歩いていた。



それは勿論、彼の愛するゆいかの為。



今日は母子手帳を貰いに行って、その足で妊婦用品を買う予定。



だから自分が必要な仕事は会社・組のどちらも済ませ、隼人に任せて此処へ迎えにやってきたのだ。



「鉄、ショッピングモールの手配は出来ているか?」



「へい。モールの責任者にも連絡済みで、警備も配置しやした。」



奏は鉄の返答に、満足そうに頷いた。



そんな時、奏たちとすれ違った3人の女。



勿論奏は意識もせず、鉄たち護衛は警戒の視線をチラリとやると、興味を失ったように再び前を向いた。




そんな女たちは、



『綾先輩マジ有り得ない!私たちが危なかったよね!』



理不尽に憤る女。



『私への・・・票の影響は大丈夫でしょうか?』



自分の未来の栄光への影響を懸念する女。



そして・・・




『奏様・・・』




そんな2人が先に歩いて行く中、歩みを止め、奏の背中をただ見つめて呟いた女の目には、激しい恋情。




『・・・私を、見て?』




彼女の呟きは奏には届かない。

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