第62話

ものすごく広い和室の空間。



奥にはなぜか虎の剥製。



そして、その虎の睨みより鋭い視線を送る人が。



部屋の最奥に、スーツを着崩した漆黒の男性が片足を立てて気だるげに座っている。



漆黒の髪をオールバックに流し、その切れ長の目はまっすぐ秋を睨んでいた。



一般人の私にも伝わってくる、威圧感。




そして・・・・




「奏?そんなに睨んだら弓さんが怯えるでしょう?それに……、今日は大事な日だから夜まで待ってって言わなかったかな?」



「・・・チッ、」



新城さんの立てた膝の間に包まれるように座っている、漆黒の長い髪の女性。



黒い笑みを見せて言い放った彼女の言葉に、新城さんは忌々しそうに舌打ちをした。



(うわっ、超美人・・・)



彼女はそれ以外言葉が思いつかないほど綺麗な人だった。



そんな彼女は、私に視線を滑らせる。



「あなたが、弓さんですね?」



「はっ、はいっ!」



なぜか直立不動で元気よく答えてしまった私。



彼女はそんな私を口に手を当ててクスクス笑う。



頬に熱を持った私は秋に視線で助けを求めた。



すると、秋は頬をゆるゆるに緩めてご両親の前に一緒に座るように促してくれる。

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