第537話
茶髪の彼は真近で見ればとても整った顔立ちをしていた。
だけど彼を覆う環境、着ている物、生やされたままの無精髭が、彼を粗野な人間にしか見せない。
私の発した言葉に目を見開くと、彼は一転、口元に手を添えて笑い出した。
そんな上品な笑い方が、やはり彼を覆う環境と正反対で。
なんだか違和感だらけで、とても不快な人間に映る。
眉間に皺を寄せた私に気が付くと、彼は小さく微笑んで恐ろしい事を言った。
「これから君たち、犯されるから。ついでに写真も撮る。
まぁ、結論から言えば、会社を辞めてこの町から姿を消さないとネットにばら撒くぞ!みたいな?」
緩やかにそう言う彼だけど、笑っていない目が本気であることを物語る。
私は少し、俯いて頭をフル回転させた。
私が帰って来ない事に悠が気付かないはずがない。
飲み会と言ってあるから違和感を覚えて探し出すのが夜中になってしまうだろう。
恐らく、目の前の彼から予想するに、携帯の電源は切られている。
しかし…、
ふと、着けているブレスレットに視線を向けた。
悠がこのブレスを追って駆けつけるまでに…、
ギュっと、目を瞑った。
・・・・間に合わない。
「あれ?大丈夫?」
その声に、震える唇を噛み締めた。
そして視線を上げる。
楽しそうにこちらを見る男に口を開いた。
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