第477話

side 葵



チリチリと、私の心が音をたてる。



ゆいかさんの行動は、再び蓮さんを地獄に落とした。



彼の嬉しそうな表情からはそんなこと想像もできないけれど、


第三者から見れば、ゆいかさんはその言葉で、行動で、彼をただ、”拘束”しているようにしか見えない。



私の元へ来てほしいわけじゃない。



だけど…、



小さく、視線を落とした。



ゆいかさんが彼を見ないのなら、彼を苦しませるのなら…、



私が、支えてあげたいと思った。




そんな私の想いを余所に、蓮さんの鷹の目はまっすぐにゆいかさんへ。



そんな蓮さんに微笑み返す彼女は、社長の懐にぬくぬくと座っていた。



チリ…、チリ…、



線香花火の火花の様に、か細く、纏わりつきそうな火花が私の心で音を立てる。



それは、嫉妬や怒り。



赤く染まった玉の様な火花は、



「ゆいか。」



社長が名前を呼んだ事で彼女の視線が外されても、


幸せそうに、笑みを落とした蓮さんを目にした事で、





ポタリと、落ちた。





「私は、」



思わず口から出たのは、震える声。



この部屋の全員の視線、いや、社長以外の視線が私へと注がれる。



頬を伝うのは、寂しさの雫。




「私は、独りだったんです。」




それはみなさんを私と”彼”の、日常へと誘う物語の冒頭部分。



組長さんが小さく頷いた事で、私は菅田悠との全てを語り出した。

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