第476話
だけどそんな俺にゆいかが落としたのは、とても、優しい声で。
触れられたピアスから、熱が広がる。
そしてゆいかの綺麗な唇から発せられたのは、
"家族よりも、大切な存在。"
そしてその言葉よりも俺の胸を高鳴らせたのは、
【信愛】
この言葉だった。
ゆいかを初めて見た時は、絶望に満ちていた。
そんなゆいかがいつの間にか、俺の隣で穏やかに笑っていて、
だけど俺はそんなゆいかを見なくなった。
そしてあの女を抱いた時、満足感に潤んだあの女の目を見て何故か吐き気がした。
次に会ったゆいかは、初めて会った時よりも絶望を深くしていて。
俺に返されたのは【恐怖】と【拒絶】
絶望した。
涙も枯れるほど流した。
それでも俺は、
あいつから離れられなかった。
それからは兄貴に向けられる【幸せ】をただ見ているだけの毎日。
自身の心が軋み、性欲に悩まされる事もあった。
それでもただ、そばにいたかったんだ。
そして今日、ゆいかの言葉は俺の心を歓喜で踊らせる。
信愛、
ゆいかからの信頼の証。
ゆいかから自分へ向けられていた、信じる心を自ら壊した俺の、
これまでの行いが報われる言葉だった。
兄貴が気にくわないみたいだけど、これだけは許して欲しい。
俺は、ゆいかの唯一にはなれないけれど、
ゆいかに信頼され、傍を赦される者でありたい。
心躍る俺は、兄貴に抱きしめられて微笑んでいるゆいかにただ、笑みを返した。
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