第10話

「明日は趣向を変えてみようと思う。」




嬉しそうに目を細める奏が、触れ合った唇が一瞬だけ離れた瞬間、そう言った。



「うん?」



勿論私はよく分からなくて、首を傾げるだけ。



「明日は”ココ”では過ごさねえ。」


「え!奏、どこか調子悪いの?」


「・・・それはどういう意味だ。」



目を細めて、低く唸る奏に苦笑いが漏れる。



奏が休日をベッド以外で過ごそうだなんて。どこか体調が悪いとしか思えないもん。



「お前、俺をどこかの下半身バカと一緒にしてねえか?」


「・・・。」



どこが違うの?苦笑いで返してみたけど、奏はベッドの上のことにかけてはただの変態だと思う。


私の目の温度が下がっているのに気付いているらしい奏は、ヒクリと頬を引きつらせている。



「確かにだな。”休日の過ごし方”については検討の余地があると俺は前々から思っていたわけだ。」



絶対に嘘だと思う。


毎回籠る用に買い出しに嬉々とした顔で行っているくせに。更に下がった私の温度に、奏が苦笑いを零した。




「今回は、”普通”を目指すぞ。」



「お堅い決意ですこと。」




気を取り直したように真剣な顔つきでそう言った奏に、私の冷たい声が放たれた。

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