第8話
それでも眉を下げたままのゆいかが可愛くて。思わず唇を舐めた俺にグロスが取れるとゆいかが抗議の声を挙げた時だった。
『それ中止ね。”白”が出たから潰すー。』
「・・・そこまでの”白”か。」
『ん。そうだねー。』
俺の言葉に、助手席の隼人が鋭い視線をバックミラー越しに寄越してきた。
それに目で頷くと、隼人はパソコンを開く。
俺たちの間で”白”とは、対象の裏の面を意味する。
この場合弘人の口調から察するに、その企業を今すぐ潰す必要がある程の事由が発生したことを意味する。
通話を切りながら、口角を上げた。
「隼人。」
「ああ、うん。了解。明日中に片づけとくから。」
パソコンを見ながらただそう言った隼人に、笑みを深めた。
「じゃあ明日の俺はオフだな?」
「え?確かに会議は無くなったけど仕事は「オフ、だよな?」」
頬を引きつらせて振り返っている隼人に顔を近付けると、
「はいはい。奏くんはオフで構いませんよ?」
溜息混じりに渋々認めた。
「よし、ゆいか。」
「ん?」
俺たちの様子を茫然と見ていたゆいかに笑みを向ける。
「デートすっぞ。」
明日の予定が、クソなものから最上級のものへと変わった瞬間だった。
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