第19話

『なにしてるんだろうね?』


『うん。男の子なのにお人形を持ってるね。』




母親の死からちょうど1年後くらいだった。私と郁は、毎日一緒に過ごしていた。


小学校に行ってしまう郁を泣いて止めたり……毎日がつまらなかったけど、放課後が待ち遠しい、そんな日々。


それも過ぎ去り、私も小学校に上がっていた。


この頃にはもう、お母さんは一緒にいなくて、私と郁だけで公園で遊ぶ。



この公園は、近所の子供はあまり来ない。


来るとしたらゲーム機を持ってダラダラしてる上級生くらい。


それもそのはず。近くに少し大きな公園がある。そこには遊具はバッチリ揃ってるし、広いグラウンドでボールも使える。


狭いせいか、球技禁止のこの公園とは大違いだから。みんな、あっちに行っちゃうんだ。



そんな日々に慣れた頃、悦郎は突然、姿を現した。


今思えば、異様な光景だった。



この時悦郎は、高校生で。学ラン姿の普通の男の子なのに、手にはとても綺麗なドールを持っていた。



外国の、ドールと言われるその人形は、普通は外国人の女の子の容姿をしたものが主。


だけど悦郎が持っているのは、髪色も、目も、真っ黒な、明らかな日本の女の子のドールだった。

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