第17話

その笑顔は、私が見たことのない、笑顔。


なんとなく、寂しい気持ちになった。



「この人は変だけど大丈夫。また学校で。」


「変って。いろはまでひでえなぁ。」



手を振り合ったそいつらに背を向けて、いろはは黒瀬と隣り合って歩き出した。



それまで一度も、私に視線を向けることのなかったいろはは、最後まで私を見ようとはしなくて。



そしてそれと同時に、悦郎にも視線を向けなかった。



心臓が嫌な感じに高鳴って、私ってもう、いろはにとってはなんでもない人間なんじゃないか、そんな考えが浮かぶ。




そんな時、スマホが着信を知らせて。



柊羽が悦郎をクソほど殴ってる横、画面を開いてみた。



「先代を煩わせるんじゃねえよっ、」


「っっ、君、には関係ないっでしょ。うっ、」



[あとで家に来ましょう。音信不通、上等。]



そんな文面に頬を引くつかせて。



[ちょっと、怒ってるからね。]



次いだ文に、頬を緩ませた。



いろはに過去があるのは知っていたけど、この悦郎が関わっているのは、間違いない。



「僕のドールっ、かえっ、してよ~。」


「っっ、クズがっ、」



鼻血を出しながら涙目で訴えるこのキモい男が言う、【ドール】はきっと……

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