郁のいない日

第1話

side いろは



数時間前に発ってしまった郁は、移動中なのか私のスマホにメッセージを送り続けてくれる。



[カラオケだるま、潰れてコンビニになってるよ。]


[そういえば、あかいもたると丸ってなに?]


[隣に伊吹が座ってきて、めんどくさいんだけど。]


[田中たち、ちゃんと来てた?]



結局、最後の所が知りたいんだろう。


「ふふっ、」


[うん、来てくれたよ。ありがとう。]


心配性な郁は、学校で私を1人にしないように、田中姉妹に頼んでくれていた。



「教室で突然頭下げてくるもんだからさ、もう絶対今日噂になってるよ。」


苦笑いの田中先輩には悪いけど、私はもの凄く、嬉しい。



「蓮池先輩に頭下げさせるなんて、さすがよっしーだな。」


「そんなんじゃないよぉ、けんちゃん。」



ハートが語尾に付いていそうな受け答えをしてる田中先輩を見て、思う。



「私も、あんなん?」


「いや、アンタらは密着度の割には案外サバサバしてる。」



田中の言葉に、ホッと息を吐いた。


私が郁の前で、あんなんなってるなら。ちょっと色々、考え直さなくちゃいけない。



「健二くんって、あんな感じの人だったんだね。」



最近まで存在も知らなかったよ。


それは流石に、口にできず。

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