第3話
しかし、今日は違った。
お前が図書館に消えた後、組の土地の権利の手続きをするため、隣の役所に留まっていた。
鉄の極悪顔のせいか閉館間近のせいか、手続きは早く済み‥‥、
役所の前、車に体をもたれさせ吸うタバコは、まあまあ美味い。
タバコの火に目を細め、なんとなく図書館の入口に目をやると・・・、
「ッッ、」
お前の笑顔に、目を奪われた。
今日は天気がいい。
図書館前に設置されているベンチは、ちょうど木の下で。
夕方の涼しい風は、ベンチの心地よさを助長させる。
図書館から出てきた女は一冊の本を持ち、微笑んでいた。
そして嬉しそうに、ベンチに腰掛ける。
その光景をただ、見つめる事しか出来ない俺は‥‥
最早認めるしかないようだ。
ゆるりと口角が、自然と上がる。
「・・・・堕ちたな。」
俺はもう、お前しか見えない。
タバコを踏み消し、車へと乗り込む。
車中、暗くなるまで本を読み耽る女をただ見つめていた。
新見ゆいか。
黒い蝶のようなお前に、俺の一生を捧ぐ。
side end‥‥‥‥‥‥
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