第67話
冷たい声を出せば、怯んだ女に笑顔を向けた。
いろはの嫌いな、笑顔を。
「お前、失礼だろ?」
伊吹の抗議の声を無視して。
残りをいろはに任せて、女の前に立った。
「これは、誰にも触って欲しくないんだ。僕といろはのだからね。」
「はぁ?」
女が息を呑み、伊吹が素っ頓狂な声を上げる。
ちょっと潔癖すぎるのは僕の欠点なんだけど、僕といろはの歴史を穢されるのは我慢ならないから。
「すみません伊吹先輩。ちょっと郁、神経質なとこがあるから。」
いろはがなんとか伊吹の機嫌を損ねないようにフォローを入れようとしている。
僕が大切にしている友達をこんな事で失わせるわけにいかないと思っているからだろう。
反して、自分の”友達”には言い訳をしようとしないのが、いろはの分からないところだ。
「あ、まぁ、いいか。座ろう。」
普通に気にしてない様子の伊吹は僕たちのシートに座る気満々。
人の話聞いてたのか?
眉間に皺が寄る。
「今の、聞いてた?」
「へ?」
片足をシートに乗せた状態で間抜け顔を向けてくる伊吹。
大体、なんでここにいるわけ?
「いつも昼は別々だろ?なんでいるんだよっ、」
眉間に皺を寄せたままの僕は、伊吹が脱いだ靴を遠くに投げた。
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