第20話
ああ、素敵。
そう思っている暇はありません。
「今日も、ごめんなさい。」
「え?」
少し俯いて。自分が情けなくなった。
「話もまともにしないで、ごめんなさい。」
「……ああ、」
聞けば黒蜜君は、緑谷君に言われてこうしてくれている。
どうせ彼の事だから、何か企んでいるに違いないですけれど。
彼の悪戯好きを知っていながら、黒蜜君と過ごせる一時を取ってしまった自分の邪な心のせいで、黒蜜君は昨日も今日も、気まずい思いをしているのに違いありませんから。
そんな私の言いたいことを分かってくれたらしい黒蜜君。
やっぱり明日からやめる、などと言われたらどうしましょう。
「じゃぁ、明日からさ、」
私の前に、影ができて。
見上げれば、黒蜜君のブラウンの瞳が私をまっすぐに見下ろしていた。
「っっ、」
息を呑んだ私に、黒蜜君は妖艶に、ニヤリと笑いました。
どこかその、余裕のある笑顔に違和感を覚えたけれど。
鼻が当たりそうなくらいに近付いたその距離が、私の思考を鈍らせます。
「明日から1つずつ、自分たちのことを話して行こうか。」
そう言って、一歩離れた黒蜜君に、ぎこちなく頷けば、満足そうに笑った彼は、踵を返した。
ハッと我に返った私が慌てて周りを見れば、不思議と誰もいなく、先ほどの私たちを見ている人間はいないようでした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます