第36話

だからだろうか。八神朝陽の家には、数々の支援者たちがいた。何を期待したのか、何を望んでいたのか。



彼等の支援の元、八神朝陽の父親は大きな会社を経営し、見事成功を果たしていた。



だからこそ、サイトに集う数々の信者の願いを叶える財力はあったのだ。



「親の金ではありましたが、彼等は人を慈しんでいた。」


「……。」



この人に”真実”は教えることはない。


八神たちは確かに人気取りのために願いを叶えてはいたが、叶えられない願いについては、恐らく、かなり物騒な手段でなかったことにしていたはずだ。



”神隠し”という言葉で片付けられてはいるが、行方不明になっている者たちがいるからだった。



この人の前で八神たちは、ヒーローでいなくてはならない。



夢を持ち、神となりたいと望んでいた若者が、自分の場所を守りたい残酷な今の神が無残にも殺した。



この人にはそう思ってもらわなくては。



そして、この人の中に浮かぶ猜疑心や、不安。それを煽れば……



「どうですか?真実を知りたくはないですか?」




この人は俺に、最も重要な情報を運んでくれるはずだ。



「分かりました。協力します。」



その返答にニヤつくのを我慢して。


「……ありがとうございます。」



なるべく穏やかに、微笑んだ。

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