第25話
答えを持つのは、女。それを手に入れた時漸く、俺たち男は理解できる。
それならば、俺には一生、手に入れることができないだろう。
愛なんて、信じてはいない。
知子を愛おしいと思ってはいても人は所詮、愛を軽視する生き物なのだから。
「先生?」
「はい。」
しかし、俺は少しだけ期待している。
「どうしました?私よりも顔色が悪いですよ。」
心配そうに眉宇を曇らせているこの人が、答えを教えてくれるかもしれない、と。
その答えに気付いた時、俺は知子を迎えに行けるのだろうか?
「いえ、少し考え事をしていただけです。」
「そう、ですか?」
異常な愛し方をしているこの人は、それ以上に大きな愛で包まれている。
そっと、京極雫の頬に触れればそれだけで俺たちを囲んでいる草花がざわめいた気がした。
「また、寝不足ですか?」
「っっ、」
隈を撫でた俺の指摘に、京極雫は頬を染めて目を伏せる。
苦笑するしかない。
この人は純粋に、俺を信じ切っている。こんなに親しげに触れているつもりでも、医者として、俺が心配していると思い込んでいる。
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