第54話

「新しい姫の紹介は後日でいいわ。だって今日はなんだかみんな、驚きすぎてそれどころじゃないみたいだし。」



振り返れば、茫然、といった表情で私を見る面々。そして一部の察しのいい者たちからは、嫌悪感満載の視線を感じた。



いやでも、なんでも、これからここの姫は、私。



この場にいるみんなに守られ、仲間として笑い合うのは、私。



口角を上げて踵を返した。



裏口に待たせてある車。それも今日で終わり。これから私は、正面から帰る。幸樹に手を引かれてね。



「ふふふっ、」


「……満足か?」



声に顔を上げれば、清水英輔がこちらを睨みつけていた。私はこの男が嫌い。


この男は、自由。



きっとしがらみや立場なんて気にせず、自分の意志のままに動ける人間だ。


しがらみや、立場を重んじて生きていく私や幸樹には、この男は理解できない。いや、したくない。



そんな無責任な生き方、私たちには許されないから。



「ええ、満足よ。」


タバコを吸っている清水英輔は、その言葉を聞くととてもいやそうに顔を歪めた。



ほんと、分かりやすい男。


雨音理人と同じ。


察しのいい男は嫌いじゃないけど、私の敵に回るなら、別。

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