第57話

「プッ!」


「冬陽?」


「フッ、クククククッ、」


「おい、冬陽?」



さっきまでは本当に苦しくて、不安で仕方なかったのに。



「ハハハッ、雀っ、めっちゃ怒ってるし!」


「……。」



こんなにイケメンで田舎の豪華な別荘に住んでて、何やってる人なのか分からなくて。ナンパな人で、凄い世話焼きで、突然女として見てるなんて宣言する変な人なのに。



そんな彼よりも怪しい家出娘な私をあそこに住まわせてくれる。こうして守ってくれて、デートに連れて行ってくれる。



湧き上がる不安も、トラウマも、雀といれば紛らわされて、こうして笑えている。



本当に不思議でしょうがない。会ったばかりの他人に自分がこんなに気を許していることが。



「ぶっ、ブスだって!アハハハ!」


「……お前、大丈夫か?」



こうして頬を引くつかせてもイケメン。どんな角度で見てもかっこいいこの人が、私なんかをかばってくれる。もうそれだけで、気分が良かった。



「はー、ぁ、ああ、お腹空いた。」


「自由か。」



だから少し、気楽に考えてみることにした。雀はきっと私を傷つけない。そう思えるから。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る