第56話

side 地平




「なんだよ?」


「いえ、別に。」




ムッとする玲に、雫様が笑う。



美しい光景だと目を細めた。



先ほどの男。確かに雫様と知り合いなのだろうが、その2人の間には、甘い雰囲気などなかったように思う。



まだ安心はできないが、”ライバル”ではないようで本当に安心した。



もし雫様にそのような相手がいれば、一大事。


玲なら絶対に、徹底的にそれをひねり潰すに違いない。



玲、いや、玲様は、【京極玲】だ。



犬神を奉る、長く君臨してきた、支配者の一族。その長兄として生まれ、生まれ持って自分が神として扱われてきたお人だ。



もちろん、自分勝手で、自己中心的、そしてそれが通る。



そんな”玲様”は、気に入らなければ即削除する。それが雫様を悲しませることになるなんて、考えもしない。自分を押し通すのが、”当たり前”そんな人なんだ。




雫様にはそれが、時には辛くなることになるのかもしれない。しかしこれも、”運命”


運命という名の地獄なのか、はたまたそんな状況から幸せを見つけるのか。



それは、歴代の当主の妻たちの課題だ。

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