第17話

手早く作れるチャーハン、即席のスープ、カップ麺。コンビニ弁当だって、一人でここに住みだしてから、挑戦したものばかり。


やってみたかった。食べてみたかった。



だからこの家に住み始めた時に早速挑戦してみた。


それは、味が濃いけど、思ったよりも美味しくて。お姉さまは軽蔑すらしていたから、やっぱり私は世間に出されるようにできているんだろうな。



蒼のご飯を用意して床に置けば、じーっと私を見ている。



「いただきます。」


そう言って一口食べれば、やっと自分のご飯を食べだした。


そんな躾したことないんだけどな。


蒼といると、自分がお姫様になったように感じてしまう。



チッ、チッ、チッ、



時計の音をBGMに、私と蒼の咀嚼する音、私の食器の音だけが聞こえる。



こんな時間を積み重ねて、私は蒼と一緒に老いていくんだろうかと、思った。まだ若いのに。お婆さんみたいな自分の考えに思わず笑ってしまう。




「あー、美味しかった。」



食器の片づけもしないで、蒼のお腹に頭を乗せて寝転がった。はしたないその行為も、自由だからこそできるというもの。



綺麗な天井を見つめていると、なんとなく眠くなってしまう。だけど、頭の中は忙しくて。


お姉さまの【迎の儀】に備えて1年間休学させられていた大学のことを考えたり、思い切ってハンバーガーでも食べてみようかな、とか。



そんな、しょうもないことを考えていた時だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る