第16話

「……蒼。」



泣き疲れた私は寝ていたらしい。頬を蒼に舐められたことで漸く、蒼の身体に顔を埋めて寝ていたことに気付いた。



少し、”犬臭い”蒼の身体は、シャンプーの香りもする。自分のメンテよりも蒼に気を使っているからか、蒼の様相は大金持ちの犬みたいだった。



視線を上げれば、時計はもうすぐお昼になると教えてくれている。



俯いたけど、蒼が、しっかりしろとばかりに鼻先で額を上げようとするから。


苦笑いを零して、立ち上がった。



「よし!」



腰に手をやって大きな声を出してみると、なんとなくすっきりした気持ちになる。


自由ではある。だけど人間は結局、何かに縛られて生きていかなければいけない。



お昼を作ろうと、キッチンに立って。メンドクサイからチャーハンにしよう、なんて。



蒼は絶対に、私が食べるまで待ってくれるから、先に自分のを手早く作る。



「まず、大学。学費は心配ないけど、やっぱりバイトはやってみたいな。」



呟きながら作ったら、具が少し焦げてしまった。即席のスープをお湯で溶かして、目の前の食事を見て苦笑いを零した。



こんな”粗末”な食事、沖田家だったら物凄く怒られるな、と。

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