第2話

side 雫




私を一言で例えるのなら、”無意味”なのかもしれない。



「雫(しずく)早くしなさいな。」


「はいお母さま、申し訳ございません。」



昔から、何をやっても姉に敵わなかった。


お茶も、お花も、ピアノも、料理も。勉強だってそう、学年が違うのに、同じ順位なのに、私は姉よりも”下”だった。



それはそうだ。


「お母さま、あまり雫を虐めないでください。」


「でもね、霧(きり)……分かったわ。気をつけなさい。」


「……はい。」



沖田霧(おきたきり)


姐は、”彼”の将来の花嫁だから。



この国には、京極玲(きょうごくれい)という支配者がいる。


それは、天皇や総理とは違う、この国の権力者。


事実上、この国を統治していると言っても過言じゃない。



それだけ京極家には実績も、権力もお金もあるということだ。



そんな京極家には、一つだけ決まりがある。


それは、京極家当主の結婚。



私が生まれた沖田家、そしてもう一つの恩田家(おんだ)、その両家から交互に花嫁を選ばないといけない。



なぜ交互になのか。それは、近親の者との婚姻を防ぐためだと言われている。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る