第14話

「おはよう。」


「はよー。」




朝からだるそうに歩く男の子。楽しそうに昨日のテレビの話をしながら友達と笑い合う女の子。



最寄り駅からの風景は、いつもと変わらない。



そして私に対する好奇の目も、変わらない。



みんな暇なのかと思う。人を馬鹿にして、笑って、何が面白いのか。



そのくせして、私が視線を向ければ挙動不審に目を逸らす。




堂々と向き合う勇気もないくせに、噂話レベルなら関わりたがる。



卑怯で、臆病。そんな人たちばかりだ。



でも悲しいのは、私がそれ以上に臆病だからだ。




「おはよ。」



振り返れば、栗山さんが笑っていた。その笑顔に胸が痛む。親しい友達に向けるような笑顔は、今の私を苦しめるものでしかなかった。



「おはよう。」



挨拶を返しても、それだけ。すぐに前を見て、早足で歩きだした。



「宿題やった?」


「……。」



関わりたくない。そう思っている私とは裏腹に、栗山さんは何事もなかったかのように話しかけてくる。



私より10センチは背が低いこの子。確かにリーチの差はあるはずなのに、栗山さんの声は私の傍を離れない。

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