第42話

side 大雅



「どうすんの?」



陸人が笑顔で俺に問いかける。



「胡散臭え笑顔を俺に向けるな気色悪い。」


「俺、狼がここにいるのはどうかと思うんだけど。」



そう続けた陸人は、笑顔でいることをやめない。この偽もんの笑顔を見ていると気色悪くてしょうがねえ。



「お前も狼だろ。」



俺が鼻で笑えば、陸人はペロリと唇を舐める。その時見えた舌ピアスは、妙な艶めかしさを含んでいて、思わず視線を逸らした。



「そういう大雅だってそうでしょ、学だって。ね?あ、寝てる。」



焼酎の瓶を抱えて眠る学の足元には何本もの空瓶が散乱している。こいつ、雛の家に来たらここぞとばかりに飲んだくれるんだよな。



「一人くらい増えたって分かんねえだろ。」


「俺らは、ね。」



声音は固いのに、陸人の顔は笑っている。こいつは顔と中身が素直に一致しない。かといって、こいつが今以上に素直に動くのも考えもんだと思う。



「だけど雛は、狼じゃないんだよ。」


「分かってるよ。」



俺たちと常に一緒にいる雛は、3人の狼を飼っている。一緒に住んでいるわけじゃないが、俺たちと雛の関係は、あの世界じゃ有名だ。

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