第50話
俺を睨み続けている和子は、俺から距離を取るように寝床の端に座り、目を逸らした。
「鬼とは、酷いものだろう?」
生意気な奴だ。それなのに、こうして言葉遊びを楽しみたくなる。
「っっ、そういうことじゃありません。」
和子を動揺させ、泣かせて、そしてこの腕で撫でたくなる。
「貴方は、感情を食料としてしか見ていないから、私の本当の気持ちにお気づきにならないんです。」
「……。」
その言葉になぜか、心臓が大きく動いた。感情とは、俺たち鬼にとっては味に過ぎず、人間の感情などそれ以外で感じる必要もない。
それが当たり前で、自然の摂理なのだ。
「貴方が今感じている味は、なんですか?」
先ほどまで避け続けていたというのに、俺をまっすぐに見つめる和子は、胸元で拳を強く握った。
「嫉妬だな。」
強い、嫉妬の香り。和子はあの贄に、同じ贄として嫉妬をした。
「その嫉妬は、貴方が思っているような感情ではありません。」
「どういうことだ。」
問い掛けに答えるつもりがないのか、和子は口を結んだまま。それでも俺を見つめる赤い目はまっすぐに俺を見つめ続けている。
「人の心は複雑です。あなた方鬼には同じ味なんでしょうが、我々人間には同じ嫉妬にも種類があります。」
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