第21話

side 和子




「……。」




突然黙ってしまった火炉。



彼の不機嫌そうな顔を見ていると、身体が軽くなっていることに気が付いた。



そっと頭を触ると、ゴツゴツとした感触が。どうやら傷が治ってきているみたい。



手足も、身体も、鈍く痛みはあるけど、さっきまで程じゃない。もしかしてこれは、鬼の妖術のおかげなのだろうか?



「あの、私は、」



その先を言うことはできなかった。



なぜなら……。



「不思議な女だ。」



火炉の真っ赤な目が突然至近距離に現れ、私をジッと見つめていたから。



「……あ。」


「こうして、俺には怖がるくせに。お前は死を恐がっていない。」



不服そうにそう言った火炉は、視線を外すと私の隣に寝転ぶ。それだけで、ふわふわの寝床が揺れた。



この寝床は、私たち人間の世界では見た事がないもの。ふわふわな感触。綺麗な布。そして、良い匂いが眠りを誘う。



火炉はそれ以上なにも言わず、ただジッと私を見つめた。



なぜか胸が高鳴る。



火炉は鬼だというのに、人間の私から見ても見目麗しい見た目をしているからだろうか?



艶のある黒髪、光沢を帯びた角、そしてジッと見つめてくるその目は真っ赤で、思わず魅入ってしまう。

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