第11話

side 火炉





「アレを持ってこい。」


「っっ、」



側近の桜土おうどが息を呑んだ。同じく側近の羽水うすいも、"なぜか"ここにいる雷知らいちも、目を見開いて固まっている。



阿呆のような言動に、苛立ちが増した。



「おい。」



俺の低い声に、一同の肩が跳ねる。のろまが嫌いだ。しかしそれ以上に俺は、臆病者が嫌いだった。



「すぐに。」



桜土が素早く立ち上がり、羽水が目を伏せる。そして雷知は。



「……なんだ。」


「いや、どういうつもりなのかと思いまして。」



俺を火炉と分かっていても、相変わらずのふざけた態度だった。




「どういうつもりだと?」



その間にも、桜土が目的の品を俺の前に恭しく差し出す。



印を籠めれば、自然に開いた小箱。その中には、真っ赤な宝石があしらわれた豪奢な首輪が入っていた。



抱いていた女の首根っこを引けば、身体がぶらりと垂れ下がる。一瞬、女が顔を顰めたような気がした。それでもかまわずに、女の首に首輪を着ける。




ヒィン……



共鳴する。女の体と首輪が。同時に、祝福とばかりに鐘が鳴り響く。



「ほう。」



美しい光景だ。女の体から流れ出る血の匂いが、俺を誘う。先ほど味見しただけで強く感じたそれは、久しぶりのものだ。



嗚呼、鐘が鳴る。祝福しているのだ。極上の肉を手に入れた俺を。

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