第9話
頭痛がする。体中痛い。だからなのか、だんだん眠気が増していく。
暗闇が、ううん、鬼が何匹いるのか。それを確認するのすらも面倒なほど。だけど、これだけは……。
「火炉。」
「「「っっ、」」」
鬼が何人いようと関係ない。どうせ私は、食べられてしまう。
「なんだ。」
それなら、この鬼が、鬼のカシラだとしても、私は。
「私、は、コレ、じゃない。」
自分は自分のまま、死にたいの。
「……こ。」
「ん?」
薄れていく意識。聞き返してくる火炉の顔はなんだか、笑っているような気がして。
「
なんだか、人間臭いと思った。
ついに目を開けていられなくなった。でもそれだけで、痛みが和らいだ気がする。
そして、恐怖心は、眠気とともに四散した。
「……和子。良き名だ。」
どこか、微睡みの中で聞こえた優しい声。それは誰の声だったのか。
少なくとも私の名前を、こんなにも優しく呼んでくれた人なんて、この世に誰一人いなかった。
和子。忌み嫌われた私は、人間に疎まれ、鬼に食らわれる。
もし生まれてきたことが間違いだったのだとしたら、これはきっと私の人生の正しい終わり方なのだろう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます