第8話

唐突に、火炉は私を抱き上げた。



「っっ、」



激痛が走る。目を見開いてただ、宙を見つめてただ耐えることしかできない私を、火炉は楽しそうに見ている。



「悪いな。俺の妖術に癒しなどない。」



そう言った火炉は、私の肩にある大きな傷をペロリと舐めた。



ビリリと走る痛み。生暖かい舌の感触に、自分が食われる側であると思い知らされる。


痛みと恐怖に一度に襲われ、何も言葉が出ない私を気にすることなく、火炉は無遠慮に私を抱いたまま歩き出す。



一歩一歩の振動がとても辛い。火炉が歩く度増す痛みは、まるで罰のよう。



”こんな風に生まれた自分”への。




火炉が立ち止まると、扉が開く音が聞こえた。とても大きな扉。目に入ったそれは門と言っていいのかもしれない。



「カシラ、ソレを。」


「っっ、」



突然、暗闇から声が聞こえた。先ほど目を覚ました時の火炉のように、まるで暗闇が話しているかのような、そんな。



「……コレは、俺が貰う。」


「っっ、」



火炉の発言に、暗闇が息を呑んだ。



「まさか。」


「カシラ?」


「え。」



暗闇は増えていく。次から次に違う声が聞こえた。

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