第58話

「だから、どんな返事でも私、大丈夫だから。」




……なんだろう、その笑顔の裏に感じる妙な圧力は。




「関口くん。」



俺の袖を掴む手に力が入る。細くて白い手。表情は断るわけないよな?と思っているように感じるのに、その手は弱く震えている。




「うん。」


「え?」



そのギャップなのかもしれない。



「付き合おう。」



思わずそう言っていた。



「……河合?」




こんなに可愛い子が今日から俺の彼女なんて、信じられないけど。



河合を可愛いと思う。この震える手を握って、止めてやりたいとも思う。




それに、俺をまっすぐに見てくれる子なんて、もういないかもしれないし。




「河合。」


「……えっ。」




少し強く名前を呼ぶと、ハッと気が付いたように河合が口元に手を当てる。その手はまだ震えていて、ジッと見ているとその目にはみるみる内に涙がたまっていく。




「……河合?」



ちょ、これどうすればいい?泣かれてしまうとどうすればいいか分からない。



やっぱ俺失礼なこと言ったのかな?まだ好きかどうかも分からないなんて。




めんどくさいがいけなかったかも。ゲームより優先しませんなんて言ってたようなもんだし。




次々と零れ落ちていく涙。これ、どうすればいいんだ?とりあえず袖で拭ってはみても、涙は流れ続けるばかり。



周りもポツポツ気が付きだして視線が集まりつつある。

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