第36話
「なにか用?」
あ、今すげー素っ気なかったかも。
若干河合ゆずの表情が曇ったのに、申し訳なく思う。
でもごめん。平気そうな顔をしてないと、心臓がもうもたない。内心謝りながらさりげなく窓の外を見た。
「あ、の、あのね。」
俺が河合を見ないからか、いいよどむ彼女。それでも俺の方へ近づいてきているのか、教室の床がミシミシと音をたてている。
いやいや、どこまで来るんだ。このまま近づかれると俺の心臓もたないって!
さりげなさを装って振り替えると、思いの外河合が近くにいるのにびっくりした。
お、もったより、近いんですけど。
至近距離で見る河合ゆずの顔は、なかなかの攻撃力があった。
薄茶色の大きな目、長い睫毛が瞬きするたびに揺れる。頬は心なしかピンク色に見えて、なによりぷっくりした唇は俺の心臓を更に高鳴らせた。
吐息まで当たりそうな距離で、河合ゆずは気まずそうに笑っている。思いの外、近づきすぎたと思ったんだろう。ゆっくりと一歩、後ろに下がった。
そして大きく息を吸って、止めて。気合いを入れるように小さく強く吐き出した。
上げられた視線はなにか強い決意を感じる。
まさか、マジで?
まさか!
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