田島 密人
日常
第1話
side 密人
「総長、準備、整いました。」
「・・・ああ。」
今日で引退する白虎に、未練が無いわけじゃなかった。
白い特攻服に視線を滑らせれば、左手に刺繍された自身の名前が飛び込んできた。
見るのも最後だろうと、軽く撫でる。
弓の事件以来、白虎の粛清を図った。
原因となった武光(たけみつ)と悟(さとる)は俺の命令に素直に従い、自分への戒めもあって言われた2ヶ月以上の半年間、倉庫にはやってこなかった。
繁華街の見回りも、下っ端たちを統率して治安の維持にも貢献していた。
しかし、肝心の弓さんが彼らに目を向けず、購買に姿を現すようになったあいつらは毎回肩を落としている。
そんなあいつらも帰ってきて、白虎は更に強くなった。
しかしそれでも、親父がいた時の白虎は超えることができないでいる。
親父は偉大で、頭(かしら)はそれ以上に大きな存在だった。
超える事の出来ない父親を持つ子は、ただの七光りだと言われ続ける。
それは俺であり、若であり、春さんや冬夜なんだ。
息子として尊敬しているが、男として負けたくない自分もいる。
親父に少しでも近付きたくて、無意識に選んだ銀髪。
少し乱れたそれを少し整えて、踵を返す。
キイィ……、
扉を開けば、整列した白虎の面々。
中には泣いてる下っ端もいるってのに、その隣のスペースでは”先代”たちがこちらを見もせずに思い思いに座っていて…、
思わず、口角が上がった。
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