第53話

「あーあ、毎日これが続くわけー?」




ソファーにダイブした小町を見て、ミルが苦笑を漏らす。それもそうだろう、ミルも最近の小町の予定に辟易しているところだ。



シュガーのお茶会に出席してからというもの、小町の予定はびっしり、お茶会で埋め尽くされてしまった。まるでシュガーのお茶会に参加したのが合図であるとばかりに、バイセンは連日、お茶会の約束を取り付けてくるのだ。


小町の予定を総括しているミルは、小町がシュガーのお茶会に参加している以上、他の令嬢たちをないがしろにするわけにはいかず、参加の許可を出すしかない。



貴族の娘にとって、お茶会とは戦場である。絶好の社交場であるそれに参加するのは義務であり、家名のためでもあるのだ。



本来なら、自分がこの城から抜け出すためにも情報収集は余念なくすべきであり、当然、シュガーなど、他の后妃候補のお茶会にも積極的に参加すべきだ。



しかし小町は、できればお茶会には参加したくはなかった。自分が社交の場に出れば、それだけ小町という人物を周囲に知られてしまうことに他ならず、小町の人柄や趣味嗜好が周囲に流れるのは、未来の自分のためにはならない、そう考えていたからだ。




謎は深すぎれば人に疑心や恐怖を植え付ける。しかし、小町はこの国の后妃候補であるから、その人物像は最低限、城のイベントをこなせば伝わる。



わざわざそれ以上の情報を気安くまき散らすのは自らの計画の妨げになるだろう。

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