第55話

「相田。僕はここ最近で思ってたんだけど…。」



それからは、僕なりにこの場を穏便に終わらせるつもりでとにかく思いつく限り話した。相田が自分がしたことをちゃんと理解していないと思ったからだ。しかし話せば話すほど相田の顔から生気が抜けていき、もはや真面目に聞いているのかも定かじゃない様子に変化していく。



「だから、相田?」


「…ふぁい。」



白目だった相田。明らかに寝てた気がするんだが?イラッとしていたら僕の服の裾を穂乃花が引く。うん、可愛い。



「知世くん。相田くん、もう満身創痍だよ。」


「え?」



穂乃花の可愛い顔と相田を交互に見るけど、そんな感じには見えない。だけど相田の連れ3人はドン引き、という表現がバッチリな顔でこっちを見ているし、穂乃花は困ったように笑っている。



「あ、そう?」


「うん。」



そんなに酷いことを言ったつもりもなんだけどな。首を傾げると、穂乃花が小さく吹き出した。



「ふふっ。知世くん、お父さんみたい。」


「え?」



なにやらツボにハマったらしい穂乃花が僕に笑みを向ける。可愛い、けど、お父さん、だと?僕が穂乃花のお父さんなら、確実に嫁に出したりはしない。



「普通こんなイカレ野郎のことを思ってコンコンと説教する人なんていないよ。もう。お人好しなんだから。」


「…イカレ野郎。」



意外に口の悪い穂乃花。相田がめちゃくちゃショックを受けている。そんな相田を一瞥した穂乃花は、チラリと相田の連れ3人を見る。その瞬間、3人共が大きく肩を揺らしたんだが。穂乃花、僕が来る前3人になにを言ったんだ?



謎に怯えられている穂乃花は小さくため息を吐いて口を開いた。



「みんな知世くんのこと舐めてるけどさ、あなた達が知世くんに勝ってるところなんて一つもないよ?」


「は?」


「んだと?」



穂乃花の挑発的な発言に、相田と連れの男が反応する。女子2人は何も言わないけど、明らかに目つきが変わった。いやいや、そんなに僕って下に見られてるのか?相田ならまだしも、見るからに素行の悪い3人よりは真面目に学生しているつもりなんだが。

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