第6話
「ふふっ、ワンちゃん、吠えグセがあるの?」
ワンちゃんだって。ワンちゃん。おい、まだ名も付いていない我が家の犬よ。お前は今日からワンちゃんでいいんじゃないかな?
「昨日買ったばっかの子犬なんだけど、めっちゃ吠える、から。」
「へぇ。買ったばっかりなんだ?ならまだ警戒してるだけかもしれないね。」
「…そんな感じじゃなくてほんと、すっごいって、いうか。」
「そこまで言うほどなら見てみたいかも。」
「あ、じゃぁ…なんでもない。」
「ん?」
飯倉穂乃花が聞き返したのに笑って誤魔化して首を横に振った。同時に背中に大量の謎汗が噴出しているのが分かる。僕、今なんて言おうとした?
『あ、じゃぁ、今度家に見に来る?』
どこのナンパ男だよっ。自分をぶん殴りたい衝動に駆られる。飯倉穂乃花の可愛さがそうさせるのか、オス全開の自分に嫌気がさす。飯倉穂乃花だって僕みたいな陰キャに突然家に誘われたらドン引きだろ。
僕の高校ライフが詰むところだった。咄嗟に誤魔化した自分を賞賛しつつ、とりあえずもう失言をしないように黙っていることにする。
「…いいなぁ。私も犬が飼いたいんだよね。」
「…へぇ、そうなんだ。」
「うん。だから、羨ましい。」
「それは、申し訳ない。」
僕の返答に飯倉穂乃花が目を見開いて、ふわりと笑う。
「ふふっ。別に謝らなくていいのに。そういう時は羨ましいだろーってふんぞり返ったらいいんじゃない?」
「羨ましいだろー。こう?」
「そうそう。あー、悔しい悔しい。」
全然悔しそうじゃない飯倉穂乃花と目が合う。自然と2人で笑っていた。そして僕の心臓はドキドキし過ぎてもう壊れているかいないかも分からなかった。
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