第58話

さっき側近の桜森さんとちょっと話しただけでものすごい顔で睨みつけてきていたあの人が、蓮水氷鷹さんと付き合いだしたと知ったら何をしてくるか分かったものじゃない。



そんなの関係ないって堂々とOKできるほど私は気が強くないし、なにより明らかになにかしてきそうなあの人のことを覚悟してまで、蓮水氷鷹さんを好きなわけでもない。私なんかがと思ってしまうし、彼からの好意を受け止める気にはなれなかった。



「それに、うちの親との話を思い出しちゃってさ。」


「へー、どんな?」



小さくため息を吐いて、真姫に向き直る。




うちの家はごく普通の一般家庭で、お父さんは会社員。お母さんは中小企業の事務をしていて、弟は小学4年生。ほんとに普通の、なんの変哲もない、そこらにいっぱいいる家族だ。



それなりに仲はいいので、夜ご飯なんかはいろんな話をしながらみんなでリビングで過ごす。私も弟も自分で言うのもなんだけどまっすぐに育ってきたから、親を毛嫌いするなんてことはないからほんと友達みたいな感覚で話している。

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