第29話

side 氷鷹



「もしかして、その辺苦手ですか?」



蔑むような視線を送ってくるのは、桜森敦斗さくらもりあつと。俺のいとこで子供の頃から共に育ってきた幼馴染でもある。



俺が誉人として生まれてから、最側近となるべく、教育されてきた。



周りの人間は疎か実の両親までもが、俺を上の人間として崇めその通りに扱ってきた。



正直うんざりだった。しかしこの敦斗は違う。俺を平気で貶すし、冗談も言う。



そして今、俺の不器用すぎるアプローチを敦斗にからかわれているところだ。



「苦手というより、まったく意識されていない。」


「誉人が?」


「…誉人が、だ。」



目を見開く敦斗に、苦笑が漏れた。

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