お伽噺

第1話

”かの方”がおっしゃいました。



『人間は面白くない。』



人間が創造されてから、その種族は権力に固執し、色に狂い、金を求めた。



そのために同族を殺し、互いに争い、醜く笑った。


そこで”かの方”は考えた。



『そうだ。こうしよう。イタッ!痛いのは嫌いなのに。でも退屈よりはマシだよね。』



”かの方”の絹のような繊細な皮膚にできた縦一線の傷は、それはそれは美しい、ルビー色の液体を生み出していく。



『そうだな。2人。いがみ合うのはそれはそれで面白かったし。』



美しい口から吐き出された言葉は言霊となり、その血に染み付く。



一滴、また一滴とまずは1人目の人間へと染み込んでいく。



人間より賢く、人間より美しく…。血が染み込むにつれ、その人間はより優秀に、より秀でた存在となっていった。




『うん。これでよし。』




”かの方”が満足そうに微笑んだ時、地上に2人のナニカが生まれた。



しかし”かの方”はそれでは満足しない。




『そうだ。他にも少しだけ、分け与えるとしようか。』



残酷に遊ぶ無邪気な幼子のように、”かの方”はその指をピンッ、ピンッ、と弾いた。

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