第20話

「で、でも、私はもう、恋愛、なんて。」



一生結婚するつもりがないわけじゃないけど、流石に今すぐ気軽にOKはできない。だって私があの男と別れたのはさっきだし、さっき浮気現場を目撃したわけだし。



「分かるよ。目の前で浮気されちゃね。」



その言葉で固まった私は、ギギギ、とまた社長のことを見る。社長の耳の赤さは正常に戻っている。チラリとこっちを見た。



「さっきの場所で。全部叫んでたから。不可抗力と、いうか。悪い。」




そうですよね。社長は悪くありません。どうやら私は、酔った勢いですべてをぶちまけていたらしい。酔っていないと思っていたけど、酔ってたんだろうな。



もはや羞恥心というレベルではなく。死にたい。穴に深く埋まってそのまま死にたい。



恥ずかしさに顔が熱い。それを冷やすように両手の平で顔を覆うけれど、まったく冷める気はないようです。



「ちなみに俺は、浮気しない。それなりに稼いでるし、顔もまぁ、そこそこだと思う。どうだ?」



軽い!社長の軽さに恥ずかしさとは別に自然と涙が出てきそうになる。



この軽さで誠実さをアピールされても、どう考えてもまた浮気される未来しか見えなかった。


素直に頷けない。さっきの車に乗せて。とお付き合いの申請は、その重さが違うのだから。

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